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『原子力大国フランスの状況とその反原発運動』コリン・コバヤシ


『原子力大国フランスの状況とその反原発運動』

http://associations.jp/archives/806
フランス在住の従兄弟、コリン・コバヤシの投稿を紹介します。


最初と最後のテキストをこちらにコペピします。

あと、ご興味ある方は、上のサイトにいらして下さい。
長い原稿ですが、原子力の歴史を知るには重要な流れが書かれていると思いました。


ーーーはじめに

フランスを想像する時、日本の多くの人が古い歴史を持った古城や、穏やかな田園風景や幅広い芸術、文化の奥行きの深さに魅了される。果ては美味しい ワインやチーズ、数々の料理からシャンソン、ファッションに至るまでを夢見て、甘い気分に浸るのであるが、実は、そういうフランスの表層の裏には恐ろしい 核開発の歴史が横たわっている。実際、全国に20箇所以上の核兵器関連施設があり、また58基の原発によって、ほとんど80%に達する電力生産量を誇ると 同時に、数多くの研究施設やウラン鉱山(現在ではすべて閉山)が全国に点在しているのである。南仏プロヴァンス地方の美しさにうつつを抜かしているのは、 まさに知らぬが仏なのである。しかし、フランスという国は、なぜ、これほどまでに原子力ずくめになってしまったのか、その疑問に答えるには、歴史を辿り直 しつつ、フランスの地勢的、政治的、地政学的背景を考慮すべきであるし、また植民地主義を盛んに行って来た旧宗主国としての、ヨーロッパ中心主義的な覇権 国家としての側面も念頭においておかねばならない。


ーーー終わりに

4.福島以後
福島事故が起こって、フランスの民意は大きく変化した。『ル・パリジャン』紙のような保守の主要新聞が行った世論調査でも、62%の人たちが脱原発 を望み、『ル・ジュルナル・デユ・ディマンシュ』紙の世論調査においても77%が同様の意思表示を行っている。大統領がどのように叫ぼうとも、チェルノブ イリ事故の25年目に同事故に勝るとも劣らない同時多発原発事故が起きてしまった福島は、今までどちらかというと原子力に信頼を置いていたフランス人に、 生きている存在基盤そのものがやられてしまう恐怖感を教えたのであろう。ボルドーの赤ワインで有名なアキテーヌ地方圏議会は、原発をこれ以上開発せず、脱 原発に向かうべきだとする決議を地方議会で初めて採択した。それもそのはず、1999年の洪水で、あわや苛酷事故になる寸前まで行ったブライ原発のある地 域で、当時、ボルドー市は全市民を非難させるべきか、検討に入ったところまで行った経験を持つだけに、福島は他人事ではなかったのだろう。いまや民意は はっきり変わったと言って過言ではない。6月11日のパリの国際行動デー・デモでは、在仏日本人含めて、5000人以上がデモをしたし、10月15日の地 方間デモ〔地方と地方を結んだ横断的なデモ〕では、25000人以上がデモに参加した。ブジェイのような過疎地でも、3〜4000名が行進した。これらの 動員から見ても、フランスの民意は大きく変わりつつあるのは確かだ。(2011.11.1記)


ーーー目次

1.原子力大国の歴史的経緯
放射能研究から核開発へ
原子力庁設立から核実験・核武装へ
2.民事核としての原発開発
モックス燃料(10)
フランスの再処理と密接な関係にある日本
フランスでも繰り返す原発事故
原子力産業の再編とフランスのグローバル・ビジネス戦略
3.反原発運動
市民による測定と監視を!
反原発から脱原発運動へ


by lamteramoto | 2012-01-07 06:07 | Nucléaire 原発問題